均時差

太陽が南中する(=真南に来る)時刻は、季節によって変わります。

太陽は、季節によってまるで「シフト勤務」をしているかのように、「早番」や「遅番」になったりします(といっても最大15分程度なので、人間に比べると小幅ではありますが…)。南中時刻がシフトすると、当然のことながら、日の出・日の入り時刻も同じようにシフトしていきます。

このように、太陽が「早番」「遅番」シフトする時間差のことを「均時差」(equation of time)といいます。

なぜ均時差が発生するの?

原因は、地球の自転速度に対する公転速度の季節変化です。公転速度が変わると、太陽の南中時間隔が伸縮し、それが積もり積もってタイムシフトとなり、均時差として表面化します。

1日の長さは、自転だけでなく、公転とのバランスで決まる

まず、地球の自転周期ですが、24時間ぴったりだと思い込んでいませんか?

それは大間違いです。

▼理由はこの図を見るとわかります。
Sidereal day (prograde)
▲1→2:自転周期(23時間56分)、1→3:南中時間隔(平均24時間)

太陽が南中してから(図の1の箇所)、地球が360°自転しただけ(図の2の箇所)では、まだ南中しません。公転によって向きが変わってしまったからです。再び南中するには、図の3の箇所まで、360°よりも余計に自転しなければなりません。地球の自転周期が24時間より4分ほど短いのはこのためです。

このように、視太陽の1日の長さ=南中時間隔は、自転速度と公転速度のバランスで決まります。自転速度そのものについても変動はわずかにありますが、この影響は小さく、むしろ季節によって変化する公転速度のほうが、南中時間隔に大きな影響を与えているのです。

公転速度が変わると、次のように南中時間隔が伸縮します。

  • 公転が速くなる → 次回の南中に必要な自転量が増加 → 南中時間隔が伸びる
  • 公転が遅くなる → 次回の南中に必要な自転量が減少 → 南中時間隔が縮む

参考:国立天文台 暦Wiki 南中時刻は変化する

このように伸縮している1日の長さをもとに24時間 x 60分 x 60秒を決めてしまうと、現代の正確な時計である原子時計との間に差が生じてしまいます。そこで、1秒のもとになる1日の長さが、視太陽日の伸縮の分を平均化した「平均太陽時」をもとに決められるようになったのです。

平均太陽時によって24時間が決められると、南中時間隔の伸縮を24時間からの差分としてとらえることができます。この差分は1日あたり最大30秒程度ですが、これは何日も繰り返されるので積もり積もっていきます。すると視太陽時が平均太陽時から徐々にシフトしていき、最大15分程度まで蓄積していきます。これが「均時差」として表面化してくるのです。式で表すとこんな感じの積分になるでしょう:

均時差 = (南中時間隔-24時間)
(引き算の順序が逆のパターンもあり)

公転速度の季節変動が生じる要因として、以下の2つがあります。

要因その1:地球の公転軌道がわずかに楕円

これについては、以前「春分の日が21日頃なのに、どうして秋分の日は23日頃と大きい値なの?」というブログ記事にも書きましたが、地球の公転軌道は、わずかに楕円のため、ケプラーの面積速度一定の法則により公転速度も季節によって増減します。

Plocha pruvodice.png
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▲これによって、視太陽の1日が次のように伸び縮みします。

  • 1月初め:近日点 → 公転が最速 → 南中時間隔が最長
  • 7月初め:遠日点 → 公転が最遅 → 南中時間隔が最短

(実際の地球の公転軌道に比べてかなり極端な楕円ですが、わかりやすくするために拡大されています)

1日の伸び縮みが積もり積もった結果、シフト幅のピークが3か月(1年周期の1/4)遅れで訪れます。

  • 4月初め:近日点付近で伸びた南中時間隔が積もり切る → 「遅番シフト」最大
  • 10月初め:遠日点付近で縮んだ南中時間隔が積もり切る → 「早番シフト」最大

年ごとの近日点・遠日点についてはこちらが参考になります。数百年のスパンで見るとズレてきますが、現代においては、毎年、近日点がお正月、遠日点が七夕の前くらいと考えてよいでしょう。

要因その2:地球の地軸の傾きで赤道と黄道がずれている

要因その1は、公転速度の「大きさ」の変動による影響ですが、実はこれだけではありません。むしろ、自転速度に対する公転速度の「向き」のほうが、より大きく影響します。
earth_orbit_north_view
▲地球の公転軌道を北極側から見た図です。
南中頃の公転と自転の向きの差により、次のようになります。

  • 至点(夏至・冬至):公転と自転が平行 → 公転の影響が最大 → 南中時間隔が最長
  • 分点(春分・秋分):公転と自転が斜め → 公転の影響が最小 → 南中時間隔が最短

もう一つの見方として、天球上にある、天の赤道と天の黄道を考えてみましょう。赤道を直線とすると、黄道はサインカーブを描いています。自転は赤道の向きですが、公転で動く太陽の位置は、黄道に沿って移動しています。これについてはAstroArtsにある説明この図がわかりやすいと思います。仮に黄道を(要因1を無視して)等速で移動したとしても、赤道方向に換算すると次のように変動します。

  • 至点は平行 → 赤道方向に換算すると最速 → 南中時間隔が最長
  • 分点は斜め → 赤道方向に換算すると最遅 → 南中時間隔が最短

これが積もり積もると、シフト幅のピークが1.5か月(半年周期の1/4)遅れで訪れます。

  • 立秋・立春:至点付近で伸びた南中時間隔が積もり切る → 「遅番シフト」最大
  • 立夏・立冬:分点付近で縮んだ南中時間隔が積もり切る → 「早番シフト」最大

要因1+要因2=複雑な均時差曲線へ

以上2つの要因が合わさると、下記の黄色い線のような曲線になります(Pokémon GO 均時差を計算に入れてないだろシリーズ – 1年間の調査結果で作成した均時差曲線)。
20190210_pokemon_go_time_diff
要因1が1年周期なのに対し、要因2は半年周期のため、このような複雑な曲線になるわけですね。

均時差のピークが訪れるのは次の時期です:

  • 秋(11月3日頃):年間最大級(16分)の早番シフト
  • 春先(2月11日頃):年間最大級(14分)の遅番シフト

均時差は次のような言葉が生まれた背景にもなっているようです:

  • 秋の日は釣瓶落とし – 夜が長くなって日没が早まるうえに、均時差による年間最大級の早番シフトが加わってさらに早くなる
  • 春の日は暮れそうで暮れぬ – 春先は夜が短くなり始めて日没が遅くなるうえに、均時差による年間最大級の遅番シフトが加わってさらに遅くなる

この言葉通り、春分と秋分で日没時刻が同じにならず、秋分のほうが日没が早かったりします。