富士山の真東(横浜・円海山)から夕日を定点観測

2012年8月13日に母親が亡くなりました。すでに父親の眠っている墓に母親が一緒に眠ることになり、その墓の面倒を僕がみることになりました。お墓参りをすると、見晴らしがよく自然がいっぱいの横浜の円海山をつい散歩したくなります。この山は僕が小学生くらいの頃、亡き両親によくハイキングに連れて行ってもらった場所でもあり、ときにはここから鎌倉や金沢文庫まで歩くこともありました。

休日は起きるのが遅く、墓参りが午後になってしまいがち。でも逆にそのことがきっかけで、ちょうど日没の早い時期だったこともあってきれいな夕日に遭遇。

実はここ円海山は、富士山と緯度がほぼ同じ35.36度(=35度21分)くらいで、ほぼ真西に富士山が見える地点なのです。そのため、ダイヤモンド富士がお彼岸の頃に見れるようです。

そこで、富士山を中心とした日没点が季節によってどのように動くかを定点観測してみることにしました(といっても常時撮影しているわけではなく月2回ぐらい訪れるだけですが…)。

2013年1月4日(小寒の前日)

2013年1月4日(小寒の前日、16:40頃)

▲ 小寒は冬至の次ですが、この時期は移動幅がまだ小さいです。日没地点が大きく南に偏っています。

2013年1月20日(大寒)

2013年1月20日(大寒、17:00頃)

▲ 小寒の頃よりも少し北へ移動していることが、山の形からわかります。でもまだまだ移動幅は小さいようです。

▼ 立春の前日(2月3日、ちょうど節分ですね)も行ったのですが、雲に隠れてしまって断念し、その次の週末に行ってみたら下のように雲ひとつない快晴という好条件で撮影できました。

2013年2月10日

2013年2月10日(立春の6日後、17:15頃)

▲ 日没地点が箱根山付近まで北上してきました。これからの季節は、急速に日没地点が富士山に近づいていくはずです。

▼ 二十四節気「雨水」の頃(2013年は2月18日)になれば、sin(330°) がちょうど -1/2 なので、冬至の日没地点と春分の日没地点(富士山)の中間に来そうですが、その6日後の夕日の写真がこれです。

2013年2月24日

2013年2月24日(雨水の6日後、17:30頃)

▲ だいぶ右に動いて富士山に近づいています。冬至点(1月4日の夕日からちょっと左のあたりと思われる)と春分点(=富士山)の真ん中を足早に過ぎていることがうかがえます。1ヶ月後、お彼岸が明ける3/24頃にはダイヤモンド富士が見えることでしょう。ただ、現地の人と話をしていたら「秋分の頃にはダイヤモンド富士を見に70人ほど集まって警察が警備に来た」らしい。ええええ!そんなに人いっぱい来るのか!? 果たして1ヵ月後、どうなっているんでしょうか…。

2013年3月9日

2013年3月9日 (啓蟄の4日後、17:40頃)

▲ ついに富士山の裾野に沈むようになりました。斜めにまっすぐの地面に沈む夕日。花粉や黄砂の季節ということもあって空気が霞んでいたようです。この日は気温20℃前後と暖かかったです。ダイヤモンド富士まであと一歩!

春分の日がやってきた。が、雲が多くて無理な状況。ダイヤモンド富士一歩手前の様子が写せたらと思ったのに残念。

そしてダイヤモンド富士が見れそうな週末がやってきた。早くも桜が満開のところが出始めていた。だが土曜日は曇り、そして日曜(ダイヤモンド富士が見れるとされている日)は雨の予報。今回はほぼ絶望的かも…

といいながらも、予想されていた雨は翌日に持ち越しとなったようで、たまに日差しが来る曇り空。微妙だ…でも、だめもとで行ってみた。

2013年3月24日(春分の4日後、17:50頃)

2013年3月24日(春分の4日後、17:50頃)

▲ …やっぱりだめだった。残念!

それでも現地には車が数台、いつもよりちょっと多め。三脚が2つほど構えていたものの、この写真のような状況で、オレンジ色にときおり光る程度。日没が近づいたら南からの前線の雲に阻まれ、ほぼ無理と判明。ということで早々下山したらちょうどパトカーがすれ違って、やはり半年前と同じように警備にきたっぽい。だけどもう見れないとわかったところなのでちょっと様子を見に来たという感じでしょうか…。

次にこの場所でダイヤモンド富士が見れる時期は半年後です。

その後、天気の悪い日が続いたものの、やっと青空がきれいな日がやってきたので、ダイヤモンド富士の時期が過ぎても引き続き観測。

2013年4月7日(清明の2日後、18:00頃)

2013年4月7日(清明の2日後、18:00頃)

▲ すっかり富士山の右側に。このまま日没地点が右へ移動すると、そのうち見えなくなりそうです。ただ、これから暖かくなって散歩によい季節なので、可能な限り観測を続けようと思います。

…と思っていたら、まさかの事件が…。

なんと、この撮影場所のすぐ近くに、虐待で死亡したという女児の遺体が遺棄されて埋められていたことが4月22日にニュースで発覚!

2013/04/24 msn産経ニュース – 横浜の女児死体遺棄 現場の雑木林 市民の憩いの場「まさかこんな所に」

遺棄されていた「磯子区の雑木林」というのは、実はこの夕日撮影スポットのすぐ後ろだったのです(おそらく100mも離れてないかも…)。ここはちょうど磯子区・港南区・栄区の3つの区境にあたる場所で、たまたま遺棄されていた場所が磯子区だったというわけでした。半年ほどたった9月21日にも、比較的新しく献花やペットボトルの飲み物が置かれていました。

この事件があったことや、日が伸びてきて北に偏って夕日が見えにくく、さらには日没が遅くなる時期に入ったこともあり、秋分が近づくまで待つことに。

あれから半年近くが過ぎ、次にダイヤモンド富士が見れると言われている9月19日がやってくる。天気は良かったんだけど木曜日ということで、仕事休んでまではいいか…ということで、2日後に撮影したのがこれ。

円海山の夕日 2013年09月21日 (秋分の2日前、17:30頃)

2013年09月21日 (秋分の2日前、17:30頃)

▼ デジカメで撮影した元のサイズまで拡大してみると…

2013年09月21日 (秋分の2日前、17:30頃) 拡大

2013年09月21日 (秋分の2日前、17:30頃) 拡大

▲ よく見ると、太陽の位置がだいぶ山頂に近いのですが、左へ少しずれています。

真東だから、秋分の日にダイヤモンド富士が見れる?…と単純に思ってしまいがちですが、実は少し夏至方向にずれます。理由は下の図を見れば一目瞭然。

真東からのダイヤモンド富士が秋分の日からずれる理由

真東からのダイヤモンド富士が秋分の日からずれる理由

円海山の位置だと90 – 36 = 54度の傾きで日が沈むので、真西にさしかかる位置が富士山の標高の分だけ上がります。その分日没地点は北にずれていなければならず、夏至寄りに4日ずれるというわけなのです。

今回は秋分とダイヤモンド富士のちょうど中間の日だったので、図の通り、上の写真のように撮影されたというわけなのです。

翌日から天気が下り坂ということで、どうなるかと思いましたが、富士山の頂上付近だけ顔を出し、少し下が雲海のような状態になるだけで済みました。雲が微妙に邪魔しているように見えますが、頂上付近から日光が少し漏れていて、ここが山頂だってことが写真からもはっきりわかります。本当にぎりぎりのところで見れました。
ダイヤモンド富士の当日はもっと天気がよかったのかも知れませんね…(誰かその日に撮影した人いましたか?)

ダイヤモンド富士を狙ってやってきた他の撮影者はというと、現地で三脚を構えていた人が一人いたぐらいでしょうか。あとは普通に立ってデジカメで撮影していた人がちょこっといたぐらい。「実は2日前だったんですよ~、国土交通省のHPに情報ありますよー」などと話をしてきました。やはり日がずれているためか、思っていたほど多くの人はいなかったし、少し上に書いたように警察がパトロールに来る…といったことも特になかったです。

その後も観測は続く…

2013年10月12日(寒露の4日後、17:00頃)

2013年10月12日(寒露の4日後、17:00頃)

寒露は啓蟄と同じ位置ですが、3月9日と比べると日付の前後関係で逆に動いているため少し南寄りです。ただ、同じ位置でも日没時刻は春のときに比べて30分くらい早まっています(この日は地平線で17:10頃)。これは均時差の影響が強く現れた結果です。一番ズレが大きいのが立春、立冬の頃で、立春は一番遅いほうに、立冬は一番早いほうにズレます。両者の差はやはり30分くらい。
9月から10月は急速に日没時刻が早まる時期だということがよくわかります。秋の日はつるべ落としとはまさにこのこと。

そしてさらに冬至の日にも撮影。

2013年12月22日(冬至の14時間後、16:30頃)

2013年12月22日(冬至の14時間後、16:30頃)

最も南(左)に偏った状態でこれだけ真西の富士山から日没地点が離れます。
一番最初の写真と比べると、ほんのわずかだけ日没地点が左にずれてるはずですが、移動幅が最小に近いのでほとんどわからないですね。

翌2014年の春分の後に撮影。まだちょっとずれてるけど、かなりダイヤモンド富士に近づいています。晴れた日曜とあって条件はよかったのですが、翌日のほうがずれないでぴったり撮影できそうな感じでした。

2014年3月23日(春分の2日後、17:40頃) 円海山西側からのダイヤモンド富士

2014年3月23日(春分の2日後、17:40頃) 円海山西側からのダイヤモンド富士

2018年の春分の4日後、ようやく雲一つない天気に恵まれたが、富士山の山頂のちょっと北側に沈んだ。1日遅かったか…

2018年3月25日(春分の4日後、17:40頃) 円海山西側からのダイヤモンド富士

2018年3月25日(春分の4日後、17:40頃) 円海山西側からのダイヤモンド富士

2019年の春分の3日後、急に寒くなったあとの晴天が日曜日と重なって、ダイヤモンド富士がぴったりの位置に!! 平成最後にして、やっとダイヤモンド富士らしい写真の撮影に成功した!!
DSC_0114

富士山の真東(横浜・円海山)から夕日を定点観測」への2件のフィードバック

  1. 春分の日と秋分の日にダイヤモンド富士の夕日を見れる場所は
    山頂からどこに線を引いたらいいでしょうか?
    知っておられたらお教え下さい。
    空き家を探そうと思います。

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